通気管が必要な理由は、排水管の中へ空気の通り道を設け、排水時の圧力変動からトラップの封水を守るためです。排水だけを流そうとして空気の出入りが不足すると、管内に負圧や正圧が生じ、ゴボゴボ音、封水の吸込みや跳ね出し、臭気の侵入につながります。
マンションは複数階の器具が排水立て管へつながるため、一つの住戸だけでなく系統全体で通気を考えます。この記事では、通気管の役割と現場での確認点を順に解説します。
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排水には空気の経路も必要。
水が立て管を流れると管内の空気も動きます。通気管は、その圧力変動を緩和して封水を守る役割を担います。
トラップ封水が臭気の侵入を防ぐ
洗面器、浴室、キッチンなどの排水口には、管の途中へ水をためるトラップがあります。この水が封水です。排水管側の空気と室内を水で隔て、臭気や衛生害虫が室内へ移動するのを防ぎます。
国土交通省の建築設備に関する技術資料は、通気管を、排水管内と大気の圧力差によって排水トラップが破封しないよう有効に設けるものとしています。通気管に関する国土交通省資料で、封水保護、汚水流入による通気阻害の防止、外気への開放に関する内容を確認できます。
排水すると管内の空気も動く
立て管へ排水が流れ込むと、水だけが移動するのではなく管内の空気も押されたり引かれたりします。上流側では空気が不足して負圧になりやすく、下流側では行き場を失った空気によって正圧が生じる場合があります。
クボタケミックスの排水集合管技術マニュアルは、高層建物の基本的な傾向として、中層階で負圧、下層階で正圧が生じ、トラップ封水の吸込みや跳ね出しが起こり得ることを図解しています。排水集合管技術マニュアルは、マンション排水での空気圧変動を理解する一次資料になります。
通気不足で起こる4つの問題
ゴボゴボという音
排水時に空気が器具側から吸い込まれると、トラップ周辺でゴボゴボ音が出ることがあります。音だけを器具の故障と決めつけず、同じ系統で同時に排水したときの状態や、通気経路の閉塞・誤接続を確認します。
封水が吸い込まれる
排水管内が負圧になると、トラップの水が管側へ引かれることがあります。封水が減り、完全に切れると、排水管内の空気と室内を隔てられなくなります。
封水が跳ね出す
下流側で正圧が高まると、トラップ封水が器具側へ押し出される場合があります。水はねや周辺の汚れだけでなく、封水量が不足する原因になります。
室内へ臭気が入る
封水が失われると、排水管内の臭気が室内へ侵入しやすくなります。臭気が出たときは、清掃不足だけでなく、封水の有無、長期間未使用による蒸発、通気と排水系統の状態を順に確認します。
マンションで使われる主な通気方式
伸頂通気方式
排水立て管の上部を伸頂通気管として延長し、外気へつなぐ方式です。立て管の頂部から空気を出入りさせます。建物高さ、立て管径、排水負荷などの条件を踏まえて設計されます。
通気立て管方式
排水立て管とは別に通気立て管を設け、各階の排水横枝管周辺から空気を逃がす方式です。国土交通省のマンション改修マニュアルは、排水管と圧力変動を緩和する通気立て管を別々に設置する方式として説明しています。マンション改修マニュアルには伸頂通気方式との違いも掲載されています。
特殊継手排水方式
排水立て管用の特殊継手で排水の流れと空気の通り道を整える方式です。製品ごとに許容流量、接続方法、立て管・横主管の条件があるため、メーカーの設計資料と施工要領で確認します。一般的な継手へ置き換えたり、枝管接続位置を独自に変えたりしません。
通気管はどこにつないでもよいわけではない
通気管へ排水が流れ込むと、空気の通り道がふさがれます。そのため、器具のあふれ縁との高さ関係、排水横枝管からの取出し位置、通気立て管への接続位置を守る必要があります。
国土交通省の公共建築設備工事標準図には、排水・通気配管の正しい取り方と誤った取り方が図示されています。通気管をあふれ縁より上まで立ち上げてから通気立て管へ連結すること、ループ通気や通気立て管の接続位置等を確認できます。公共建築設備工事標準図を工事固有の設計図書と合わせて参照してください。
施工前に見るポイント
- 排水方式を確認する。 伸頂通気、通気立て管、特殊継手等のどれかを把握する。
- 系統を追う。 各器具、排水横枝管、立て管、横主管、通気終端まで図面で追う。
- 通気取出し位置を見る。 排水が流れ込まず、封水を保護できる位置か確認する。
- 高さを断面で確認する。 あふれ縁、天井、梁、外気開放部との関係を見る。
- 他設備との干渉を確認する。 ダクトや配線を避けた結果、通気の横走りが不適切になっていないか見る。
- 採用品の条件を確認する。 特殊継手や通気弁は製品資料の適用範囲と施工方法を確認する。
平面図だけでは上下関係を判断できません。PS内、天井内、屋上まで断面でつなぎ、途中で塞がる箇所や逆勾配がないかを確認します。
改修工事で注意したいこと
既存マンションでは、通気管自体に水が流れないため不具合へ気づきにくく、隠ぺいされたPS内で破断や誤接続が残る場合があります。国土交通省のマンション改修マニュアルも、通気管は改修対象になりにくい一方、PS内で破断したまま長年気づかれない例があると注意しています。
排水立て管だけを更新するときも、通気方式が変更前と同じ機能を保てるかを確認します。住戸内の一箇所だけで音や臭気が出ていても、原因が共用立て管や屋上開放部にある可能性を考え、系統単位で調査します。
症状から確認する順番
- ゴボゴボ音:発生する器具、同時排水、封水の動きを確認する。
- 臭気:封水の有無、蒸発、器具接続、通気系統を確認する。
- 水はね:下流側の正圧、横主管の流れ、通気経路を確認する。
- 流れが遅い:詰まりだけでなく、通気不足と勾配も切り分ける。
症状だけで通気不足と断定せず、詰まり、勾配、器具不良、封水蒸発など他の原因も順に切り分けます。
通気管が必要な理由のまとめ
通気管は、排水管の中へ空気の経路をつくり、排水時の正圧・負圧を緩和してトラップ封水を守るために必要です。封水が保たれることで、臭気や衛生害虫の室内侵入を防ぎます。
マンションでは、器具単体ではなく立て管と横主管を含む系統全体で考えます。施工時は通気方式、取出し位置、高さ、外気開放、特殊継手の条件を図面と一次資料で確認し、勝手なルート変更を避けてください。
参考資料
- [SRC1] 国土交通省「建築設備に関する技術資料(通気管)」 (官公庁・確認日 2026-08-14)
- [SRC2] 株式会社クボタケミックス「KCクボタケミックス排水集合管技術マニュアル」 (メーカー一次情報・確認日 2026-08-14)
- [SRC3] 国土交通省「マンション改修マニュアル」 (官公庁・確認日 2026-08-14)
- [SRC4] 国土交通省「公共建築設備工事標準図(機械設備工事編)令和7年版」 (官公庁・確認日 2026-08-14)










