マンション設備の共用部・専有部はどう分ける?配管工事の施工区分を確認する順番

マンション設備の所有・管理区分、工事契約区分、配管接続境界を3層で示した概念図

マンション設備の工事で「ここは共用部か、専有部か」と聞かれたとき、場所だけで答えるのは危険です。PS(パイプスペース)にあるから共用、住戸の中にあるから専有、と単純に決まるとは限りません。

配管工事では、少なくとも次の三つを分けて考えます。

  1. 所有・管理の区分:管理規約上、誰が管理する部分か
  2. 工事契約の区分:今回の工事で、どの業者がどこまで施工するか
  3. 物理的な接続境界:主管、枝管、メーター、バルブ、継手など、実際にどこでつながるか

三つの区分は関係しますが、同じ意味ではありません。所有上は共用部分でも今回の設備工事に含まれない場合があり、逆に住戸内の作業が共用設備の改修として発注される場合もあります。施工担当者は、名称から推測せず、管理規約・設計図書・工事区分表・契約範囲を照合します。

まず「共用部分」と「専有部分」の意味を分ける

専有部分は、区分所有者が単独で所有する住戸などの部分です。共用部分は、構造躯体、共用廊下、階段、共用設備など、区分所有者が共同で利用・管理する部分を指します。ただし、設備配管の境界は、見えている場所だけでなく、用途、接続関係、管理規約の定めによって判断します。

国土交通省の令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)は、専有部分を住戸番号を付した住戸とし、天井・床・壁は躯体部分を除く部分を専有部分とするモデルを示しています。同規約は、専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分を除き、専有部分に属するものとするモデルを示しています。

同規約の別表第2は、PSやメーターボックスの一部、給排水・消防などの設備、一定範囲の配線・配管を共用部分として例示しています。給水管は本管から各住戸メーターを含む部分、排水管は配管継手と立て管を、共用部分のモデル例として挙げています。

これは個々のマンションへ自動的に適用される答えではなく、管理規約を作るためのモデルです。国土交通省のマンション管理・再生ポータルサイトも、専有部分と共用部分の区分は各マンションの管理規約で定められるため、まず自身のマンションの管理規約を確認するよう案内しています。

所有・管理区分と施工区分は別に確認する

管理規約で共用部分と分かっても、今回の施工範囲が決まるわけではありません。新築工事なら建築、機械設備、電気、消防、ガスなどの工事区分があります。改修工事なら管理組合工事、区分所有者工事、指定業者工事などの区分が追加されることもあります。

施工区分を決める資料は、契約書、特記仕様書、設計図、工事区分表、見積内訳、質疑回答、施工図です。たとえば「メーターまで」と書かれていても、メーター本体、一次側・二次側の継手、保温、支持、試験、表示、貫通処理を誰が担うかは別途確認が要ります。

国土交通省の建築設備工事設計図書作成基準は、工事種目別に図面を作成し、他工事との区分を図面に明示する考え方を示しています。官庁施設の設計図書作成に使う資料ですが、施工区分を接続点と作業項目まで図示する考え方は、境界確認の参考になります。

施工区分を確認する7段階

1.対象設備と工事目的を特定する

給水、給湯、排水、通気、消火、空調、換気のどの系統か、新築、更新、修繕、住戸リフォームのどれかを確認します。同じ配管でも工事目的によって発注者と施工範囲が変わります。

2.当該マンションの管理規約を確認する

標準的な例を結論にせず、その建物の管理規約、使用細則、修繕工事の申請要領を確認します。管理組合や管理会社へ確認するときは、対象箇所を図面や写真で示します。

3.設計図書と工事区分表を照合する

平面図や系統図でルートを確認し、工事区分表で担当を確認します。「設備工事一式」という表現だけでは境界が見えないため、接続点の前後、機器支給、電源、制御、保温、穴埋め、試験まで項目を分けます。

4.接続点を一つずつ図示する

主管と枝管、立て管と横引き、メーターの一次側と二次側、機器と配管の接続部など、境界候補へ印を付けます。場所の名称ではなく、どの継手、フランジ、バルブ、端部で引き渡すかを明確にします。

5.付帯作業の担当を確認する

配管の接続点が決まっても、支持、保温、塗装、貫通部処理、耐火処理、清掃、表示、検査、写真、完成図の担当が残ります。主工事と付帯作業を同じ表に並べると、抜けを発見しやすくなります。

6.関係者間で境界図を共有する

設備、建築、電気、消防、ガス、管理側など関係者ごとに解釈が違わないか確認します。口頭合意で終わらせず、質疑回答、打合せ記録、承認図のいずれかに残します。

7.施工後の記録と完成図へ反映する

現場で境界が変わった場合は、施工班へ伝えるだけでなく、検査範囲、写真、完成図、引渡し資料も更新します。誰が維持管理するか分かる表示や記録までつなげます。

場所別に考えるときの注意

PS内の立て管と枝管

PSは共用部分として扱われることが多い場所ですが、そこにあるすべての設備の所有・施工区分が一律に同じとは限りません。立て管、住戸へ入る枝管、バルブ、掃除口、メーターの関係を図面と管理規約で確認します。PSの施工前確認は、マンションPS内の排水縦管を施工前に確認するポイントも参考になります。

メーターボックス

メーターボックスという場所の名称だけで判断せず、ボックス自体、メーター、止水部、前後の管、保温、遠隔検針配線などを分けます。所有・管理の境界と、施工・支給の境界が違う可能性を確認します。

住戸内の枝管

住戸内にあることだけで専有と決めません。共用立て管との接続、床・壁の躯体貫通、漏水時の影響、管理規約の定めを確認します。リフォームでは、工事可能な時間、共用部の養生、断水、管理組合への申請も別の確認事項です。

境界が曖昧なときの質問の作り方

「これは誰の工事ですか」だけでは回答が曖昧になりがちです。次の形で質問すると、関係者が判断しやすくなります。

  • 対象:何階・どの系統・どの部位か
  • 境界候補:どの接続点の前後か
  • 作業項目:材料、接続、支持、保温、処理、試験のどれか
  • 根拠資料:管理規約、図面、区分表のどこが一致しないか
  • 影響:未決のままだと、どの工程が止まるか

回答を得たら、その箇所だけでなく同じ系統・同じ住戸タイプへ適用できるかも確認します。一つの境界判断を類似箇所へ反映するときこそ、書面化と図面反映が重要です。

結論:3種類の境界を重ねて確認する

マンション設備の共用部・専有部を判断するときは、場所の印象だけで結論を出しません。当該マンションの管理規約で所有・管理区分を確認し、契約図書で施工区分を確認し、図面上で物理的な接続境界を確認するのが基本です。

標準管理規約は考え方を整理する手掛かりですが、個別マンションの規約や工事契約の代わりにはなりません。境界を継手や作業項目まで具体化し、関係者の合意と記録をそろえてから施工へ進みます。

参考資料

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