水圧試験で圧力が下がると、最初に漏水を疑いがちです。しかし、原因候補には接合部からの漏れだけでなく、管内の残留空気、仮設プラグや試験ポンプ側の漏れ、圧力計の状態、樹脂管の膨張があります。原因を決めつけて配管を解体すると、漏れていない箇所まで手直しすることになります。
切り分けの基本は、試験条件を確認し、仮設試験系を点検し、区間を狭め、最後に配管本体を判定することです。試験圧力、保持時間、判定値は管種・継手・用途・設計図書で変わるため、この記事では一律の合格数値を示しません。
🧾
条件確認。
対象管種と手順を照合。🫧
空気抜き。
高所と末端を確認。🔧
仮設系点検。
ポンプ・ゲージ・プラグ。🔍
区間分割。
漏れ候補を狭める。
圧力低下を見た直後に止めること。
急な圧力低下、目視できる噴出、継手の抜けや膨らみなど異常がある場合は、追加加圧を続けず、周囲の人を離して試験を中止します。減圧や部材の取り外しは、現場の安全手順と採用品の施工要領に従います。
異常が見えない場合も、合格させるために何度も追い加圧するのではなく、開始時刻、開始圧力、経過時間、現在圧力、水温・周囲温度、試験区間を記録します。この記録が、漏れと材料特性を分ける手掛かりになります。
最初に試験条件を照合する。
国土交通省の公共建築工事標準仕様書は、配管系統ごとに試験方法、試験圧力、保持時間を定めています。これは、配管の用途が違えば同じ条件を使えないことを示す一例です。実際の現場では、特記仕様書、施工図、管・継手メーカーの施工要領、監理者の指示を確認します。
- 試験対象の管種と継手は何か。
- 水圧試験が指定された系統か。
- 試験圧力と保持時間はどの資料に基づくか。
- 試験区間に弁、機器、減圧弁などが含まれるか。
- 各部材の許容条件を超えていないか。
- 判定は圧力計だけか、目視確認も必要か。
国土交通省の同仕様書には、対象配管の試験を隠ぺい、埋戻し、被覆施工などの前に行う規定があります。すべての民間工事へ直接適用される共通ルールではありませんが、漏れ箇所を見られる段階で試験する重要性を理解できます。
切り分け1:管内の空気を疑う。
クボタケミックスの水道配水用ポリエチレン管技術資料は、水中に空気が混入すると水圧低下の原因になると説明しています。空気は水より圧縮されやすいため、管内に残ると加圧後の挙動を読みづらくします。
高い位置、立ち上がりの頂部、閉じた末端、器具接続部に空気が残っていないか確認します。再充水する場合は、低い側から急激に入れず、空気が逃げる末端を確保し、採用品の手順に沿って十分に排気します。
確認のコツ。
排気口から水が出ただけで完了とせず、気泡が続かないかを確認します。高所が複数ある系統は、空気だまりの位置を施工図に書き込むと再確認しやすくなります。
切り分け2:試験器具側を確認する。
圧力低下が配管本体からとは限りません。試験ポンプ、ホース、バルブ、圧力計の接続、テストプラグ、キャップ、仮設栓を一つずつ目視・触診します。わずかなにじみは床に落ちず、ねじ部や保温材の表面だけを濡らす場合があります。
圧力計は、試験範囲を読み取れる目盛か、ゼロ点に異常がないか、接続部に漏れがないかを確認します。別の正常な圧力計へ交換して挙動が変わる場合は、計器側の異常を疑えます。交換や校正の扱いは現場の品質計画に従います。
仮設プラグを含む試験系だけを短い区間で確認できれば、配管を壊す前に仮設側の問題を除外できます。ただし、加圧中のプラグやキャップへ近づいたり、締め直したりしません。
切り分け3:樹脂管の膨張特性を確認する。
クボタケミックスの建築設備向け資料は、架橋ポリエチレン管とポリブテンパイプについて、水圧で管が膨張し、漏水がなくても圧力が低下する場合があると説明しています。水道配水用ポリエチレン管の技術資料も、初期膨張で水圧値が下がり、低下量は埋設条件、管径、管路長、初期水圧値などに左右されるため一義的に決めにくいとしています。
したがって、金属管の感覚で樹脂管を即座に不合格にしてはいけません。一方で、「樹脂管だから下がって当然」と漏れを見逃すのも誤りです。採用製品の予備加圧、安定待ち、保持、判定方法をそのまま実施し、目視確認と組み合わせます。
切り分け4:系統を分割して漏れ区間を狭める。
空気と仮設系を確認しても判定できない場合は、ヘッダー、区画弁、枝管の閉止点を使い、試験区間を小さくします。分割前に、閉止できる弁の耐圧条件、逆止弁の向き、機器を試験から外す必要がないかを確認します。
- 幹線と枝管を分ける。ヘッダー方式なら枝ごとに閉止し、変化する区間を探します。
- 階・住戸・エリアで分ける。試験履歴と圧力変化を同じ書式で記録します。
- 露出している接合部を見る。ねじ、フランジ、差込み、プレス、ワンタッチなど接合方式別に確認します。
- 端末部を見る。水栓継手、テストプラグ、バルブまわりは仮設部材を含めて確認します。
- 特定後に正規の方法で補修する。増し締め可能か、部材交換が必要かは接合方式ごとに判断します。
ブリヂストンの配管システム資料は、対象製品で圧力が下がった場合に漏水箇所を特定・処置し、再度試験する手順を示しています。これは製品固有の条件を含むため、他社製品の補修方法や数値へ流用せず、「特定後は処置して再試験する」という進め方の参考にします。
切り分け5:温度と経過時間をそろえる。
試験開始直後と終了時で水温や周囲温度が大きく変わると、材料や試験系の状態も変化します。クボタケミックスの水道用ポリエチレン二層管資料は、環境温度を圧力低下量に影響する要素の一つとして挙げています。
比較するときは、開始条件、経過時間、測定時刻、温度をそろえます。日射を受けた露出配管、早朝と日中、温水を使った充水など条件が違う試験値を、そのまま横並びにしないことが重要です。
漏れ箇所が見つかった後の再試験。
補修後は、直した箇所だけの目視で終えず、同じ根拠資料に基づいて対象区間を再試験します。補修で隣接継手へ力が加わった可能性もあるため、周辺接合部も確認します。試験記録には、初回結果、切り分けた区間、原因、処置内容、再試験結果を残します。
⚠️ 避けたい判断。
- 圧力低下だけで漏水箇所を決める。
- 合格値に戻すため追い加圧を繰り返す。
- 加圧中にプラグや継手を締める。
- 樹脂管の膨張を理由に目視確認を省く。
- 異なる管種の試験条件を流用する。
- 補修後の再試験を省略する。
現場用チェックリスト。
- 根拠にした設計図書・製品施工要領の版を記録した。
- 管種、継手、機器、弁を含む試験範囲を明確にした。
- 空気抜きと充水手順を確認した。
- 試験ポンプ、圧力計、ホース、仮設プラグを点検した。
- 開始値、経過値、時刻、温度を記録した。
- 樹脂管は製品指定の安定化・判定手順を確認した。
- 圧力変化と接合部の目視結果を両方で判定した。
- 不明時は区間を分割し、原因を狭めた。
- 補修内容と再試験結果を保存した。
水圧試験で圧力が下がったときは、「漏れか、漏れでないか」を一足飛びに決めるのではなく、条件、空気、試験器具、材料特性、区間の順に確認します。採用品の施工要領と設計図書を基準に同じ条件で再現できる記録を残すことが、確実な切り分けにつながります。
参考資料
- [S1] 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版)」 (官公庁・確認日 2026-08-14)
- [S2] 株式会社クボタケミックス「水道配水用ポリエチレン管 技術資料」 (メーカー一次情報・確認日 2026-08-14)
- [S3] 株式会社クボタケミックス「給水・給湯・追い焚き配管システム」 (メーカー一次情報・確認日 2026-08-14)
- [S4] 株式会社ブリヂストン「プッシュマスター施工要領・確認試験」 (メーカー一次情報・確認日 2026-08-14)










